If I can stop one heart from breaking. I shall not live in vain


by cupido
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世界で一番美しい国

暦の上では、秋分から寒露に入り、もう季節は冬といった感じであるが、
筆者の家の周りでは、刈り取られて間もない稲が朝露に濡れ、凛とした風に香る秋。
秋の夜長、風呂上りに外に出て、ぼけーっとしたり
昼に縁側にすわって本を読んだりするのが、とても気持ち良い季節である。

そんな秋には、多くの言葉が冠されるわけだが、筆者個人的には
『読書の秋』『芸術の秋』と言ったところ、食欲は通年…(笑)

当時活字が大嫌いだった筆者は、大学でイギリスの古典文学を学んだ。
大いなる暇つぶしと、いかにも大学デビュー学生らしい虚栄心も手伝って
時間があったら嫌々でも本を読む事にした筆者(笑)
最初に手にしたのが、沢木耕太郎著『深夜特急』であった…

そんな19歳の夏、初めて海外に行ったのを皮切りに、旅行狂いになった。
こうしてはいられない!そう思ったのである。
という事で、今回は『読書の秋』をテーマに、旅行に関する本を交えて
筆者の旅行観を少々…。
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画像は"バックパッカーの聖地"タイの首都、バンコクにあるカオサン St.


少し前、旅先から戻った友人からショックな言葉を聞いた。
「もう俺は、二度とあの国には行かん。」

筆者が大学生の時、靴を鳴らして外国を旅していた頃、初めて行った国々で
やはり同じ様に思う事は少なくなかった。
旅行者にそう思わせるには、小さくても何かキッカケがあるものだ。
お国柄として大きく捉えた場合、それは今後およそ数世紀変わらず、我々が生きている
間には、少なからず大金を叩いて、再度足を運ぶ価値のある場所とは思えない。
当然といえば、当然の理屈である。

町のあまりの不潔さに驚かされたり、初めて金を騙し取られた時、浮浪者にからまれた時…
もう二度と、こんな低俗な国に足を入れる事はあるまい。何度もそう思った。
しかし、一方では日本のそれを遥かにしのぐ歴史を持つ、美しい町や文化があったりもする。
なによりそこには、自身が会社を遅刻してまで、道に迷った筆者を目的地に案内してくれたり
時には食事をご馳走してくれたり、家に泊めてくれたりと…
異邦人の筆者に対して、信じられない親切をしてくれる人も住んでいるのだ。
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村上春樹
旅においては物事は予定どおりに順調には運ばない。
何故なら我々は異郷にいるからである。我々のためではない場所-それが異郷である。
だからそこにあっては、物事は我々の思惑どおりには展開しない。
逆に言えば、物事がとんとんとんと上手く運ばないのが旅である。上手く運ばないからこそ、
我々はいろんな面白いもの・不思議なもの・唖然とするようなものに巡りあえるのである。
そして、だからこそ我々は旅をするのである。

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旅先で出会った、中国人系フランス人のラムさん曰く
「全てにおいて、フランスは世界で一番美しい国だ。」
フランスで筆者が金を騙し取られた時、なにが世界一なものか!と思った。
しかし、筆者はたかだか数週間、彼は数十年フランスに住んでいる。
フランス人の彼自身が、多少ひいき目に、自国を評価しているとしても
少なくとも、我々異邦人が断片的に得た情報で、フランスは悪い国であると
評価するのは間違っている。

旅行者が陥りがちな事だが、たった数日の滞在、そしてたった数人の現地人との
交流で、あたかもその国の全てを見たかのように錯覚してしまう。
かつて筆者に英語を教えてくれたカナダ人が言っていた。
「日本は面白くない。だから僕は帰るんだ。君と会えないのは寂しいけど
僕はもう一度日本に遊びに来ることはしないだろう…」
彼はカナダに帰ってから、日本の事で多少ネガティブな見解を伝えはしても
少なくとも「もう一度訪れたい良い国だ」と熱心に友人たちに勧める事はないだろう。
同じように、帰国後、フランスの悪い印象を筆者が語ったとして…
親切にしてくれたラム氏が、それを知ったら、どんなに悲しむだろうか。

沢木耕太郎
もし、この本を読んで旅に出たくなった人がいたら、
そう、私も友情をもってささやかな挨拶を送りたい。
恐れずに。 しかし、気をつけて。


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村上春樹 著
『雨天炎天 -ギリシャ・トルコ辺境紀行-』
東京:新潮社,1990,p.75-76

沢木耕太郎 著
『深夜特急 第三便』東京:新潮社,1992,後書

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by cupido | 2006-10-27 18:06 | 雑学系とか